白井 末好 工房長(がらすや)のインタビュー

がらすや 白井 末好 工房長

がらすや 白井 末好 工房長 SUEYOSHI SHIRAI

ガラス工芸の道を志したきっかけや現在に至るまでの経緯をお聞かせください。

わたしはいわゆる「金のたまご」世代でして、中学を卒業してすぐに集団就職で大阪の呉服問屋に就業しました。その後技術職を希望して東京に移り、日本電気(NEC)で8年間働きました。後にコンピュータが主力製品となる日本電気ですが、わたしが就職しました当時はクロスバー交換機が主流でした。働き始めの頃は、工場のラインで組み立てなどに従事していましたが、その後本社から呼ばれ試作品を作るよう命じられました。当時は試作品がそのまま製品として世に出る時代でした。 仕事自体は楽しかったのですが、将来を考えたとき、このまま大企業の中で埋もれていくことに疑問を感じるようになりました。やはり「ものづくり」が自分の性分に合っていましたので、大工に転進することも考えました。そんな折、開業したばかりの東急ハンズに足を踏み入れたところ、店舗にステンド・グラスの材料が陳列されていました。わたしはこれに魅せられて仕事にしたいと考え、最初は独学でステンド・グラスの作品作りを研究し始めました。制作を始めて4年くらい経った1980年に、技法を本格的に学ぶため著名なガラス作家・佐藤新平先生に師事しました。先生の工房ではたくさんのことを学ばせていただくと同時に、出会いもありました。
 5年ほどの修行生活の後、いよいよガラス製品の注文を受けるようになりました。多くは設計士様から仕事を依頼され、指定のデザイン通りに作る仕事でしたが、ご依頼に従って自分でデザインし制作する仕事もやりました。しかしご依頼でお作りしたものはあくまで「商品」ですので、写真で記録として残していません。たまにテレビで建物が紹介される際、わたしがお納めしたものが映っておりビックリすることがあります。
 1987年に佐藤先生の工房で一緒に習っていた門下生の始めた「工房ななかまど」に工房長として、3年ほど勤務しました。しかしその後は自分でも工房を作りたくなり、その2年後に3人の仲間と「スタジオ・エクセル」を創設しました。その後わたしだけが残り、屋号を「がらすや」と改め現在に至っています。
なかなか変化に富んだ半生でしたが、妻はただ「好きなことをやってみたら」と言うだけで、ここまでついてきてくれました。感謝しています。

レッスンの内容について、教えてください。初心者の方には、どのように指導されていますか。

わたしの工房には、決まったカリキュラムはありません。趣味でガラス工芸を楽しみたい方のためのスクールですので、「ものづくり」を楽しむことが主眼です。興味を持ってこられた方には、作りたいもののイメージがおありです。必ずどこかでモチベーションになる作品をご覧になっているはずなのです。生徒さんがご覧になったものは、何かしらのガラスに置き換えることができると考えています。わたしは、そのためのアドバイスと技法をご提示するだけです。とは申しましても、ご自分であまり具体的なイメージがない方もいらっしゃいます。ある程度サンプルになるものを作り貯めていますから、その方にはいくつか想像しやすいサンプルをご提示し、お選びいただきます。しかしながら、「ものづくり」は基本的に押し付けでやるものではありません。わたし自身「ものづくり」が好きで始めたことですので、生徒さんにも同じように楽しんでいただきたいのです。

教えていらっしゃる技法について教えてください。特に人気が高いのは、どの技法ですか?

絵付けをするステンド・グラスがポピュラーですが、このほかにも、キルン(電気炉)ワーク、フレームワーク、バーナーワーク、接着、サンドブラストなどさまざまな技法があります。一般的に、大分類ではガラスを加熱して変形する(ホット・ワーク)か、冷めたガラスを加工する(コールド・ワーク)かに分けられます。形状の種類や大きさは、技法によって向き・不向きがありますが、まずはどんなものが作りたいかおっしゃっていただければ、それに応じた引き出しをご用意します。ただ、吹きガラスとバーナーワークは、専用の設備がありませんのでこちらではできません。代わりに仲間の工房をご案内させていただきます。
キルン(電気炉)ワークをおやりになる生徒さんで、ご自宅での作業を望まれる方には、特製の電気炉をお作りしています。この電気炉は、ガラスの破片やその他素材を熱でくっつけるためのものです。ある時期までわたしはメーカー製を使っていたのですが、ガラス工芸をやるにはやや使い勝手が悪いと感じておりました。そこで作業者の「わがまま」をふんだんに盛り込み、電気炉を自分で設計し作ることにしたのです。するとご自宅に電気炉を持ちたいというニーズが発生したため、これに対応いたしました。廉価で販売させていただいています。

最近開催された「かわさきガラスアートフェスタ」ついて教えてください。

先代の川崎市長である阿部氏が、地域産業振興の一環としてガラス工芸のイベントを5年前に始めました。川崎には、「東京ガラス工芸研究所」をはじめとしたガラス工房が数件あるため、助成金を出してガラス工芸を普及させようという意図がありました。今年は工房が集まる川崎市が、技法や文化を発信する拠点として認知されることを目指し、少し大掛かりなイベントになりました。著名作家や外国の方をお招きして講演会・実演会も開催し、盛況のうちに幕を閉じました。当工房も出展し、さまざまなお客様からお問い合わせがありました。

レッスンの際心がけていること、地域のみなさまへのメッセージをお願いします。

先ほども申しましたように、生徒さんのご意思を何よりも尊重しています。ですので、余計な手出しをしないことです。ただ、はじめのうちは具体的なアイデアが固まりにくいと思いますので、そのための手助けはさせていただきます。地域の皆様には、ぜひ工房をのぞきにいらしていただきたいと思います。ガラス工芸は決して敷居の高いものではありません。定期的な見学会・説明会は開催しておりませんが、ご連絡をいただき次第、随時ご説明をさせていただきます。これまでの作品例もご紹介いたしますので、お気軽にお越しください。

※上記記事は2013.12に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

がらすや 白井 末好 工房長

がらすや白井 末好 工房長 SUEYOSHI SHIRAI

がらすや 白井 末好 工房長 SUEYOSHI SHIRAI

  • 好きな本・愛読書: 小説などはあまり読みませんが、作品作りのための資料はたくさん読みます
  • 好きな映画: SFもの。特に「スター・ウォーズ」シリーズ(1977年~米20世紀フォックス)
  • 好きな言葉・座右の銘: 凛として生きる
  • 好きな音楽・アーティスト: 演歌。特に美空ひばり
  • 好きな場所・観光地: 生田緑地 家から近いです。
  • 生年月日: 1948年3月8日
  • 出身地: 生まれは三重県、育ちは福岡県
  • 血液型: A型
  • 趣味・特技: 「ものづくり」全般

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