ありまね農縁 白井 大輔 代表 DAISUKE SHIRAI
2010年、実家の農園で就農。「ありまね農緑」の代表。
2010年、実家の農園で就農。「ありまね農緑」の代表。
高校生の頃まで、祖父が梨とタケノコの農園を営んでいました。そんなある日、家に帰ってきたら、その梨の木がすべて祖父により切られてしまっていたんです。今となっては祖父の真意はわかりませんが、おそらく、婿養子だった父は銀行員として忙しく働いていたので、将来のことを話し合う時間がなかったんでしょう。
祖父の農園はいずれ私が農家を継ぐことになるだろうと思っていたのですが、「若いうちから農業をしなくても……」という思いがあって、農協に勤め始めました。そこで出会った同世代のお客さまが、農家を継ぐお話をされていて。「若いうちから始めてみたら、いろんなことに挑戦できた」と話されていたんです。「それもそうだな」と思い直して、就農することにしました。その決断は、間違っていなかったと思います。もし50代から農業を始めていたら、新しい形の農業にチャレンジできなかったかもしれません。
就農してからは、勉強の日々でした。すでに祖父は他界していましたし、父も農家のことはほとんどわからず、相談相手がいませんでした。どこかで農業の研修があれば、毎回参加するようにしていましたね。ただ、一言で農家といっても、植え方や栽培方法はまちまちです。私はさまざまな事例を知りたかったので、妻とともに地域の農家を回っては畑を観察したり、仲良くなった農家さんにアドバイスをいただいたりしながら勉強しました。
今でこそ野菜を中心に栽培していますが、最初は野菜を育てようとは思っていませんでした。まずはレモンを育ててみようと思っていたんです。ただ、柑橘類は実がなるのに5年ほどかかります。「その間に野菜を育てよう」と思ったことから野菜の栽培を始めました。そうしたら意外にも野菜の栽培にハマってしまって……! 今では旬の野菜やレモン、ライムなどの柑橘類を栽培しています。
当農園は、朝収穫してその日のうちに販売する「朝採れ野菜」にこだわっています。真夏で品目が多いときは5時から採っています。夏の時期はとうもろこしと枝豆がおすすめですよ。枝豆に甘いイメージはないと思うんですが、うちの枝豆はとても甘いんです。とくに朝採れ枝豆は格別で、一度食べたらやみつきになりますよ(笑) 以前、スーパーで売ってるものを購入して食べてみたことがあるんですが、「うちの枝豆って最高なんだな」とに思いました。それだけ野菜は鮮度が大切なんです。
私たちの農園では、少量・多品目の栽培を取り入れています。多品目の栽培の良さは、季節ごとに旬の野菜が収穫できることです。近年、旬の野菜を知っている方は少ないように感じます。スーパーに行けば、季節に関係なく野菜が手に入るようになってきたからかもしれませんね。旬の野菜は栄養価も高いので、ぜひ美味しい時期に食べてもらいたいです。
それに、多種目の栽培は作り手側も飽きません。本当は一つの品目にしぼった方が効率が良いんですが、私はいろんな野菜を研究しながら、より美味しく育てていくことにやりがいを感じます。
「ありまね農縁」の名前を「農園」ではなく、「農縁」にしたのは理由があるんです。私はつねづね地元の皆さんとの縁を大切にしたいと思っていました。やはり、顔が見える人に食べてもらうことが一番うれしいんですよね。
そんな思いもあって、農園の近くに直売所を設けました。毎朝10時に新鮮な野菜や柑橘を販売しています。夫婦ふたりで農業を営んでいるものですから、今は自動販売の形で対応させていただいています。ですが、地域の皆さんとお話する機会もあり、「待ちどおしかった!」「美味しい!」と言っていただけるとうれしいですね。その言葉を聞くために続けているんだと思います。これからも地域の皆さんに喜んでいただける「美味しいものづくり」を追求したいと思います。
※上記記事は2021年8月に取材したものです。
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