一木 美英 院長（春待坂ハートクリニック)のインタビュー

循環器に加え、一般内科・老年内科に長年携わってきた経験を生かして

父が肺を悪くしていたこともあって、医師を目指すようになりました。その父は10数年前に私が看取ることになったのですが、それもあって当初は呼吸器内科医を目指したのですね。私の母校も今は科が分かれていますが、当時は第二内科と言い、循環器と呼吸器を一緒に診るところに入局したのです。そこでまだ初期も初期の頃、心筋梗塞で瀕死の状態の方が運ばれてきました。急遽カテーテル治療をおこなった結果、その方は笑顔でお帰りになることができたわけですけども、その経験をきっかけに循環器内科の道を歩むことになったのです。
山梨県内をはじめ、各地の病院を回った後母校へと戻り、助教として診療と後進の指導にあたったのち、横浜市内の病院に勤務しました。そこはいわゆる市中病院で、循環器を見つつ、一般内科や老年内科を総合的に担当していました。同時に、感染対策のチーフトして取りまとめを仰せつかっていたのですが、ご存知のように新型コロナウイルスが流行し、その対応にも尽力してきました。その経験をより身近な場所で役立てたいと願っていたところ、縁あって鷺沼の地に『春待坂ハートクリニック』を開業するにいたったのです。

循環器病によって生活の質が落ちていく

「心不全パンデミック」という言葉があります。人生百年時代と言われるようになり、超高齢化社会が現実となっていく中で、心不全が右肩上がりに増えていくと予測されています。心不全や脳卒中など、いわゆる循環器病は、命そのものへのリスクも大きいですが、生活の質が落ちてしまう側面があるのです。例えば、ちょっと動いただけで息が苦しくなったり、症状が重いと着替えるだけでも息が切れることも。医療の発達によって多くの命が救われるようになりましたけども、その一方でそうした状況が生まれているんですね。
高血圧などの生活習慣病は、さらなる大きな疾患を引き起こすリスクとなります。その行き着いた先の結果を見てきた専門家として、みなさんが健康に長く暮らしていくための一助となれれば幸せに思います。

丁寧に説明することを心がけて

丁寧に説明をすることが大切です。納得して医療を受けていただきたいですから、医療を提供する人間としてそれは不可欠なことです。なぜこの治療が必要か、その先に何が待っているのか、ということをきちんと伝える義務が我々にはあります。
生活習慣病の治療の最終的な目的は、循環器病を予防し、その発症を抑えることです。繰り返しになりますが、その行き着いた先を知っている専門家として、懇切丁寧にみなさんにご説明をしていきたいと考えています。

内科医としての役割

お薬は必要なものですけども、漫然と同じお薬を使い続けることには疑問を持っています。ご高齢になると10数種類のお薬を使われているケースも見受けられますが、それはいかがなものでしょうか。必要なものは必要ですが、今は様々なお薬がありますから、効果を見極め、うまく組み合わせていくことが求められるのです。つまるところ、内科医はお薬をいかに調整するか、という仕事です。心不全を例にあげますと、微妙なさじ加減が必要となるのですが、作用の時間や用い方にも十分に配慮しなければなりません。その中で本当に必要なものとそうでないものを見極めることを絶えず続けていかなければならないのです。
開業医は時間が取りづらく、知識のアップデートが弱くなる傾向がありますが、1人ひとりの方にとってより適切な医療を提供すべく、不断の努力を続けてまいります。

地域のみなさんへメッセージ

発熱の方とそうではない方との診療スペースを完全に分けるなど、感染対策には万全を期しています。新型コロナウイルスの流行により、懸念されるのが受診控えの傾向です。みなさんが不安で病院を受診できなくなることがないよう、オンライン診療を含め、万全の対策をこれからも実施していきます。
地域の方が困った時に、そして本当に具合が悪くなった時に頼っていける場所になりたいと思っています。もちろん、症状や病気の種類により、より適切な医療が考えられる際は責任を持って次につなぐ役割も果たしてまいります。どうぞ安心してお越しください。

※上記記事は2023年2月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。