櫻林 有 院長（ゆゆる鍼灸整骨院)のインタビュー

目の前の方に「ありがとう」と言っていただける幸せを胸に

高校時代は部活での怪我が多く、よく整骨院のお世話になっていました。その際、人の身体に触れるだけで「ありがとう」と言われるなんて、いい仕事だなと思っていたんです（笑）。実家は、装身具屋さんでした。指輪を作ったりする仕事ですね。父がよく、「自分は商品を納品するだけで、直接、ありがとうとは言われない」とこぼしていました。そういうことがあって、医療のお仕事全体に好ましいものを感じていたのかもしれません。20代は「見聞を広めたい」と考え、ニュージーランドや様々な場所に行き、いろいろな職業を経験しました。その後、20代後半にさしかかって改めて勉強を積み、資格を取り、今年になって自分の治療院を開院する運びとなりました。
私は結婚してからずっとこの辺りに住んでいます。娘は今小学校6年生なのですが、彼女からすれば、ここは地元なんですよね。実は、この治療院の内装工事も水道やら何やらも、全て娘を通じて知り合った方々の手によるものです。そもそも、場所からして、近所のお饅頭屋さんの好意によるものですからね。ずっと場所を探していて、なかなかこれ、というところにめぐり合うことができないでいたのですが、皆様のおかげで良いスタートが切れたと思っています。

柔道整復と鍼灸を組み合わせて症状のすみやかな改善をはかる

施術の目安としては30分強。部分的なものか、全身的なものかによっても違ってきますが、30分ほどを目安に、目の前にいる方の痛みに応じた治療を私の技術と設備をすべて使っておこなっていくことになります。私は柔道整復師と鍼灸師の免許を取得しています。これに各種電気治療器を合わせて施術をしていくわけです。様々なやり方がありますので、大まかに分けると、一般に柔道整復では骨折・捻挫等、急性期の疾患を取り扱い、それに対して鍼灸では、不定愁訴や原因がはっきりしない痛み等、慢性期を取り扱うケースが多いと言えるでしょう。
ここでは初診時の問診に時間をかけています。同じ症状が現れているにしても、それがいつから起きて、何をきっかけに起こったかによってアプローチはまったく変わってきます。おひとりおひとりの希望を汲み取った上で、あらゆる施術を組み合わせ、最も良い効果を得られるよう工夫していくのです。

3つの鍼を使い分けていく

一言で「鍼」と言いますが、その流儀によって3つに区別されます。解剖学に則った現代鍼灸。日本古来から伝わる経絡治療。そして中国を源流とする中医。それらを症状により、適宜使い分けるのが当院の特徴になります。現代鍼灸の場合、鍼ではあまり用いられてこなかったぎっくり腰等、急性期の痛みにも対応します。対して経絡治療や中医は、うつ病や不定愁訴などに高い効果を発揮します。用途だけではなく、方法にもはっきりした違いがあり、例えば経絡治療の場合、5ミリ程度と、鍼を刺す範囲はごくごく浅いものなのに比べ、中医では、例えば背中だけでも100本以上刺すことがあるように、見た目上にも大きな変化があるんですね。当然、やり方によっても印象は違ってきますので、その方の好みも伺いながら、より大きな治療効果を求めて使い分けていくことになります。

論文に携わることが、新しい技術を取得することに通じる

私は鍼灸の教員養成科を卒業しています。教員養成科は教員になるという選択肢もありますが、もう1つ、研究者としてその道を究めるという選択肢があります。日々の仕事をおこないながらということになりますが、私も論文を学会に提出しています。事故等により片足や片手を失った状態を断端（だんたん）と言いますが、論文のテーマは、この断端に関するものです。例えば、足がないのにくるぶしにかゆみを感じることがあります。これは脳の機能が麻痺を起こしていると考えられていますが、それを分析・解析していくものです。研究はまだ序章の段階ですが、研究者としてなんらかの結果を出したいと考えています。
論文は、最も新しい情報です。医学のみならず、科学の世界においても、論文が世に発表され、それが様々な人々から検証を受けることによって、新しい考えや方法が確立されています。ですから、論文を読んでいないと、最先端に追いついていけないことになるのです。私も研究者の末端に名を連ねるものとして、また1人の治療家として、より良いものを求める姿勢を堅持していきたいと考えています。

これから受診される方々へ

『ゆゆる鍼灸整骨院』では、一般の方々を対象にしたお灸教室等の開催を予定しています。そのほか、有資格者へのセミナー等も予定していますが、治療にとどまらず、地域にお住まいの方に私たちの知識を役立てていただけるよう励んでいくつもりです。当院では透明性を高め、真っ当な治療を旨としています。お身体のことで何かお困りのことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

※上記記事は2019年4月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。